音楽は心の友だち〜Kくんのこと   

                     2001.9   

9月3日、東京文化会館で「みんなあつまれ!子どもとオーケストラ実験工房コンサート」が
開かれました。首都圏のプロオーケストラのメンバーが子どもたちと演奏する試みで、
今年で4回目になります。いつもながらおとなも子どもも大熱演、このすばらしいコンサートに、
知り合いの小5のKくんもセカンドヴァイオリンで参加していました。
 Kくんの右手はよく動きません。てんかんという病気の発作を押さえる手術で、右手の機能を十全に
残すことができなかったのです。右手がだめでもヴァイオリンなら弾けないだろうかとお母さんから
相談を受け、先生を紹介して、保育園のころからレッスンを始めました。はじめはヴァイオリンの弓を
握ることができず、ひもで縛って練習していたKくんが、「自分で持つ」とひもをほどき、今はゴムの
助けを借りているものの、自分の手で弓を持って演奏しています。持ち前の負けず嫌いと
お母さんの奮闘で、本当にすばらしい進歩を遂げました。
 がんばりやのKくんですが、「子どもとオーケストラ」に申し込む頃、手術で改善されたはずの
発作がしばらく前から重くなってきたことで、お医者さまから再手術の必要性を
ほのめかされていました。再手術では、右手の完全な麻痺の可能性も否定できません。
でも、Kくん親子は「今ここにあるチャンスをつかんでやってみよう」というチャレンジ精神で
このコンサートに応募しました。お母さんは「今日この時のヴァイオリンの音は2度と聴けないかも
しれない」というお気持ちで、日々の練習を聴いていらっしゃるのだそうです。
 「子どもとオーケストラ」コンサートでは、「将来はヴァイオリンの弾けるお坊さんになりたい。
ぼくは話すのは苦手だけれど、ヴァイオリンで伝えたい。」というKくんの作文が紹介されました。
ヴァイオリンを弾き続けることのできる健やかな身体をもっておとなになること、
そして多くの人の心と向き合う僧侶という立場でヴァイオリンを奏でること、
私もそれを願ってやみません。彼は、きっと今日も人一倍熱心にヴァイオリンを練習しています。
専門に進むとか名手になるとかではなく、自分自身のために。
 私たち(ディヴェルターズのメンバーの一人が彼の現在の先生です)もまた、
音楽が人の心の支えになり得ること、その喜びが力となることを彼から教わり勇気づけられました。
私たちも「ありがとう」です。
そんな音楽の力をみなさまにお伝えするべく、いつも全力投球で
音楽と向かい合っていきたいと思っています。

 

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