始まりとそれから

                   1996.7

しばらく前に放映していたピアノを題材にしたドラマのおかげで、クラシックのCDが
売れ行き好調だそうです。番組で使われた曲をもう1度聞きたいというのをきっかけに、
クラシック音楽に親しむチャンスができて、いつもはポップスや歌謡曲のCDを
がんがん聞いていた若い人たちが、「けっこういいじゃん」とショパンのピアノ曲を
ヘッドホンで楽しむ。そういう出会いも素敵だな、と思います。
もちろん、今までクラシックに疎遠だった人も、小学校・中学校と音楽の授業で
それなりに色んな音楽を経験したはずですが、今テレビで聞いたのが新鮮!と感じるのは
お勉強と楽しみの違いでしょうか?勉強だって、興味があっておもしろい!と思えなければ、
理解することも覚えることも難しい。学校での「音楽」も、現場の先生はいろいろ
工夫しながら、楽しい・おもしろい授業を目指していらっしゃるに違いないのです。
でも忙しすぎてなかなかたいへん。小学1年生では鍵盤ハーモニカをここまで
弾けるようにする、3年生ではリコーダーでこの曲が吹けるように、という到達目標が
難しすぎる気がします。興味があったら脱線して他の音楽も聴いてみる、音で遊んで
楽しむ余裕がもう少しあればと思います。音楽・図画工作(美術)・体育などは
成績を出さない授業、と決めて、先生も生徒も「受験に関係ないから適当に」ではなく、
受験に直接関係ないからこそ、心や体の栄養になる楽しい体験をする時間に、
というのは大胆過ぎるでしょうか。
ともあれ、いろんな場所・いろんな場面でクラシック音楽は流れています。
耳をとめたその曲全部を、改めて聞いてみたくなることもあるでしょう。
耳慣れたフレーズが、誰それ作曲の「・・・」という曲だったとわかって
うれしくなった経験のある方も多いのでは。お友だちの発表会で聞いたあの曲が
すてき、CMで使われていたあのメロディが印象的、と「きっかけ」や「始まり」は
たくさんあります。そこで生まれた興味を、どういうふうに先へつないでもらえるかが、
クラシック音楽に関わる人たちの課題だとも言えるでしょう。
コンサートに来てくれる、今はまだ小さなお客さまたちが、何かのおりに
「あ、この曲どこかで聞いたことある」と、心のどこかにとどめてくれるような
演奏をお届けできたら最高です。誰かの音楽とのおつき合いの「始まり」になって、
「それから」が広がっていくなら、そのコンサートは幸せな出会いでしょう。
そんな音楽鑑賞会・ファミリーコンサートといった「始まり」のコンサートで、
いろんな条件にもかかわらず、一生懸命全力投球してくれる演奏家といっしょに
活動をしています。

        

             事後報告      2002.11.10  

昨年、「ロングバケーション」のビデオを見ました。
なかなか新鮮でした。あれを見て、ショパンのCDを買った人は、今
どうしているのかな?と、ふと思いました。はやりすたりは世の常ですが、
1曲くらいはその人の心に「お気に入り」として留まっていてほしいな。
どこかで、「あ、その曲、知ってるよ」と言ってもらえるといいな。
私は、久保田利伸という名前をあの時初めて知ったけれど、
今でもあの歌を覚えています。

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