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絶対音感

                         2003.3

ピアノ教師をしていたり、ホームページを持っていたりすると、
必ずあるのが絶対音感についてのご質問です。
「演奏家の人たちって、みんな絶対音感があるんですか?」「ピアノを習うのには
絶対音感が必要ですか?」「小さいうちに訓練しないと身につかないものなの?」などなど。
特に「絶対音感」という本がベストセラーになって、興味を持つ方が増えたようです。
「うちの子にはないようで」と、さっさと悲観的になる方までいらっしゃいます。
 そもそも絶対音感とは?なにかの音を聞いたとき、基準となる音がなくても、
それが西洋の音階の何の音かわかる(認識する・再現する)という力です。
音の高さを区別して聞き取る力には、確かに生まれつきずいぶん差があります。
絶対音感は、身につける・つけないではなく、
持っているか持っていないか、と考えたほうがよさそうです。
少なくとも、音楽を習い始める時期には、持っている子と持っていない子に分かれています。

では、何故早期教育が叫ばれるのか?絶対音感にしろ相対音感(基準となる音があれば、
音を判別できる力)にしろ、早くからトレーニングすることで、鍛えることができるからです。
特に相対音感は、「それがドなら、これはミファソ」というように、聞いた音を覚えていて
そこから次の音を推し測る感覚で、これは小さいときの方が訓練しやすいと言えます。
絶対音感とは体の中に恒久的な基準音を持っているようなものですが、それが内側になくても、
外側で与えられたものをきちんと利用できれば、音や和音や調性を認識することは可能になります。

では、相対音感は絶対音感より劣っているのか?そんなこともありません。
 生まれつき運動神経がいいと言われている人は、そのままで優秀な野球選手になれるか?
スケートを滑らせたらすぐ一等賞になるのか?もちろん、ニブいねなんて言われる人よりも、
少々器用に進むかもしれません。でも、最終的に大切なのは、そのスポーツを好きかどうかと
いうことと、そのスポーツに対するセンスだと思います。
この「センス」って運動神経とは違いますよね。
「運動神経」を「絶対音感」、「センス」を「音楽性」という言葉に置き換えればいいのでは、
と思います。そして、何より、音楽を好きかどうかということ。
 絶対音感でも相対音感でも、音楽を学ぶ役には立ちます。でも、それだけを分けて考えるの
ではなく、小さい頃から音楽に親しむことで感性全体をのばしてあげたい気がします。
音を正しく言い当てられても、美しい演奏ができるとは限りません。
楽器を習いに行く時間だけ確保するのではなく、家庭で音楽に親しむ。
難しいことを考えずに、歌を歌ったり手遊びをしたり。
そういった経験が、長く音楽を楽しむのにずいぶん役に立つと思います。
日常的に体にしみこむ音の量を、週1回のレッスンでまかなうことはできないのです。

私ですか?おおよそのところはわかる、でも身辺にあふれる音がすべてドレミで聞こえる
わけではないので、ぼちぼちの絶対音感ってとこかな?
幸いなことに、ピアノは自分で音の高さを作る必要のない楽器なので、
絶対音感がなくっても、正しい音が出せますよ。

要するに、私が言いたかったのは、音楽でもスポーツでも勉強でも、
条件(才能)が揃ったからやってみる、揃わなかったらやらない、
というものではないでしょ、ということです。
「好き」と「やりたい」が一番大事。
「好き」なら、始めてみましょうよ。いつからでも。どんな状況でも。
おけいこでも、そういう人たちを応援していきたいな、と思っています。

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