プロをめざすということ @

                  1995.9

                               
ピアノおけいこを続けている生徒から専門の学校に進みたい、ピアノの先生になりたいという
希望を聞くと、いつも少し悩みます。ピアノに限らず音楽の道を選ぶということは、
本人にとっても周囲の人々にとっても労多くして功少ない選択であること間違いありません。
本人は、ただ演奏家になりたい、先生になりたい、と希望に満ちて考え、とりあえずがんばろうと
思っています。ご両親は、これから先の努力と経済的な負担のことを考えるのが当然でしょう。
音楽を専門に学ぶための作業は、他の分野と比べてはるかに多いと思います。かつてピアニストの
中村紘子さんが、小さいころからピアノが好きだったので、幼稚園のころ一日5時間弾くこともあった、
と書いていらっしゃるのを読んだことがありますが、普通それだけの練習を楽しく自主的にこなせる
お子さんはいないでしょう。
私は小さいうちからそこまでやる必要はないと思いますが、それでも小学校高学年で一日2時間の
ピアノの練習はほしいし、これを続けることは簡単ではありません。が、大変才能のある子どもが
毎日4,5時間の練習を欠かさないことも多い今日、その練習量の功罪はともかく、のんびりと
していては間に合わないのも事実です。また、もう少し大きくなれば練習量ももっと増え、楽典
(音楽の文法)やソルフェージュ(音楽のリーディング?)の勉強も加わってきますから、学校の
勉強以外にこれだけの負担を抱えることが、本人にとっても家族にとってもたいへんなことです。
昔に比べて誘惑が多く、一つのことを成就するために他のことをあきらめるのが酷なこのごろでは、
なおさら難しいかもしれません。
    
いつも心を痛めるのは中学生です。公立中学校では課外部活動もほとんど必修の状態で、
帰宅時間も遅く、それからピアノの練習(脳味噌も酷使する肉体運動)やその他の勉強を
こなすことは至難の業です。中学の先生方の努力もわかりますが、自分の道を定め目標に向かって
がんばっている子どもの努力を、せめて部活動と同等に扱って、その負担を軽減するよう
ご配慮願えないかといつも思います。私が中学生の時、平日に行われるコンクールを
受けたとき、周囲にわからないよう当日病欠したことにしなさい、と指導されました。
運動部の大会が公欠扱いなのに、と大変不満に思いました。
(余談ですが、趣味で楽しくピアノを続けている生徒でも、練習時間の確保・レッスンに
通う時間の確保など問題が多く、中学生のおけいこは本当に大変だと思います。)
こうした小さいときからの努力が実り、晴れて音楽大学に入り無事卒業したとして、
期待通りに報いられるとは限りません。ピアニストになれる人はごくわずかですし、
ピアノの生徒は減少の一途、一般就職も困難です。前途多難な音楽への道、
続きは次回に。

      

             事後報告         2002.10.8

最近は、音楽大学を志望する子どもが減って、どこかの音大に入るというだけなら
門も広くなったかしれませんが、入るまでの努力と費用・膨大な授業料が
相変わらず志望者とその家庭を圧迫しているのは確かです。
結局、音楽を専門に選ぶことで何を身につけたいのか、自分が
何を求めているのか、本人が相当な覚悟で臨まなければならないのは確かです。
また、実際には、そんなに面倒なら音楽に進まなくても、と、受験そのものを
やめてしまう人も多くなっています。

 

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