バッハな少年たち      

ピアノの先生の悩みとして、「バロック音楽を弾かせる時期と進め方って難しい」というのが
あると思います。私のところでも、今現在、コンスタントに「インベンションと
シンフォニア」を弾かせている子は稀ですし、バロック時代の曲って宿題にしても
時間がかかってなかなか進みません。「こういうの、好きじゃない」とか、
「これ、苦手です」とか、やる気のない対応にどうしたらいいかなあ、と、ずっと
思っていました。

ところが、私の生徒やまわりにいる中学生の男の子たちが、やたらバッハに入れ込んで
いるのです。いわゆる「バロックのお勉強」や「インベンションとシンフォニア」とは
縁遠い人たちなのですが、みんなバッハを弾きたがる。
中2の生徒は発表会にどうしても!と「小フーガ」を弾き、中3の生徒はその
「小フーガ」を次の曲にご所望。中1の甥っ子は、今は習ってはいないのですが、
誰かの発表会で聞いた「インベンション」が気に入って、目下8番を特訓中。
「バイエル程度しか弾けないと思うのに、あの曲が弾きたいと言って」とは
お母さんの弁。そういえば、以前にも「トッカータとフーガ」がいいって発表会で弾いた
少年もいたなあ。バッハではないですが、小4の少年はヘンデルの「ソナタ」を
「これ、かっこいいから」と選んでました。
そして、うちの愚息です。8月の発表会でバッハの「無伴奏チェロ
組曲第1番」全曲に挑戦。その上、絶対弾きたい!とヴァイオリンの生徒さんたちを
巻き込んで「G線上のアリア」を合奏しました。プログラムへの一言は「バッハ命!」。
「こんなの、いや!」とまじめな女の子たちがそっぽを向くバッハが、
どうして男の子たちの熱い視線の的なの?

先にも書いたように、アカデミックな「お勉強」の課程としてバッハに接したことの
ない人たちです。まあ、チェロを弾いている息子は、メヌエットやブレやら、
バロックの舞曲に親しみつつ進んでは来ていますが、どうもそれだけではないようです。
彼らには、バッハが新鮮で「かっこいい」ようなんです。
ポリフォニーだから、両手が別々でたいへん、なんてことは考えていません。
こういう「やる気」がわくと、ものごとは実力とか難易度とかという基準を無視した、
ミラクルパワーで進むのです。不可能も可能になっちゃうのです。
う〜ん、なんか不思議なんだよなあ。

バロック時代の作品に、ポリフォニーだからとか、勉強になるからとかではなく、
純粋にきれいだから小さいころから親しんでもらいたい、と、教材選びに苦労しつつ、
弾きやすそうな曲からみんなに弾いてもらっているのですが、まじめな女の子ほど、
手こずりながら弾いて、「こういう曲は苦手?」「・・・うん」というふうに
なりやすいものです。私自身、子どものころ、苦手だと思ったことはなくて、でも先生に
「バッハは、あんまり好きじゃないの?」と聞かれていましたから(きらいと
思っていないのにそう言われると、少し傷つきました)、やっぱり下手だったんですね。
生徒のことは言えませんね。でも、生徒にきらいと言われても、やっぱり
「弾いてごらん」と思いますね。だって、絶対すてきだもの。
どうしたら、バロック音楽を楽しみつつ弾いてもらえるのか、私もずっと
思案していたのです。

でも、そしたら突然、「バッハって、かっこいい!」と思う少年がたくさん出現したんです。
男の子と女の子、ピアノを習う(音楽をする)スタンスが違うんでしょうか?
思わずうれしくなってしまったんですけど、そういう気持ち、女の子に感じてもらうには
どうしたらいいのかな?って、今度は別の意味で悩んでいます。

                           
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